同種骨移植

手術実績と特徴

整形外科では、平成16年3月8日から同種骨移植を行っています。当院は、死体からの採取は行わず、人工関節手術時の余剰骨(手術の一環として摘出され不要となった、大腿骨頭、脛骨顆部)を使用しています。対象疾患は脊椎固定術、人工関節(再)置換術などです。

平成19年9月12日に同種骨移植運営委員会を設置しました。以後、平成19年に改訂された、日本整形外科学会の「整形外科移植に関するガイドライン」および「冷凍ボーンバンクマニュアル」ならびに「クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑いの取り扱いについて」(平成22年1月27日厚生労働省通達)に準じたボーンバンクおよび同種骨移植実施要領を作成し、それに基づき同種骨移植を施行しています。

同種骨移植運営委員会名簿
役職 氏名
整形外科診療部長兼関節治療センター副センター長 後東 知宏
整形外科主任医長 大道 泰之
脳神経外科診療部長 木内 智也
内科総括部長兼がんセンター長兼外来化学療法室長 橋本 年弘
臨床検査科主査 割石 有美
看護師長(手術室) 吉野 明子
副看護師長(手術室) 藪原 由紀子
副看護師長(8階病棟) 齋藤 充代
臨床工学室 豊田 英治
臨床工学室 長尾 和昌
看護師長(HCU) 永坂 尚美

ボーンバンクおよび同種骨移植実施要領

日整会誌第81巻第5号2007年の「整形外科移植に関するガイドライン」および「冷凍ボーンバンクマニュアル」の改訂ならびに「クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑いの取り扱いについて」(平成22年1月27日厚生労働省通達)に準じるものとする。

現時点では、同種骨移植に関する法律および省令はなく、1329号保健医療局長通知(通常本人または遺族の承諾を得たうえで医療行為として行われ、医療的見地、社会的見地から相当と認められる場合には許容されるものであること、したがって、組織の摘出に当たっては組織の摘出にかかる遺族の承諾を得ることが最低限必要であり、遺族に対して、摘出する組織やその目的等について十分な説明を行ったうえで、書面により承諾を得ることが運用上適切であること。)の運用に関する指針がある。

我々は、死体からの採取は行わず、人工関節手術時の余剰骨を使用するため、この局長通知に準じ、本人および家族に説明し、書面により承諾を得ることとする。

ヒト骨組織を利用するに当たって遵守すべき基本原則

倫理的妥当性および安全性を確保するため、以下の9つの原則を遵守する。

  1. 倫理委員会の承認
  2. 骨の提供に関わる任意性の確保 提供は、本人および家族の自由意志に基づくものであり、意志決定に不当な力がかかってはならない。
  3. 骨の採取および移植に当たっての十分な説明と同意 ドナーに対しては、骨提供の手続き、採取方法、利用目的などについて、レシピエントには、骨移植の有効性、潜在的危険性について、十分な説明が行われなければならない。
  4. 骨提供の社会性、公共性およびドナーの尊厳の確保 骨の提供は、公共性を有する崇高な行為であり、ドナーの尊厳を確保し、意思と善意を尊重して、骨を取り扱わねばならない。ドナーは、提供後に財産上の権利を主張することはできない。
  5. 無償の提供 財産上の利益をドナーに供与してはならない。万一、骨を他の施設に提供する場合でも、対価としての財産上の利益供与を受けてはならない。(別項で記述したが、当院だけでの使用を原則とする。)
  6. 費用の負担 ドナーおよび関係者は、骨採取に関する費用を負担する必要はない。
  7. 安全性および骨移植の有用性の確保 骨の採取、処理、保存または移植における安全性と有用性を確保し、移植により伝播される可能性のある感染症等に関わる情報の収集に努めねばならない。
  8. 個人情報の保護 ドナー、レシピエントの情報を漏洩することがあってはならない。また、両者相互に情報が伝わることがあってはならない。
  9. 情報の公開 骨バンクは、個人情報の保護に留意しつつ、その活動全般について、社会に情報を公開する体制を整備し、業務報告を年1回、同種骨移植運営委員会に行わなければならない。

ヒト骨組織の採取に関する基本原則

  1. 骨組織採取における説明と同意のあり方 説明を受ける側の立場に十分配慮した説明を行い、採取前に骨組織の提供についてのドナーおよび家族の自由意志に基づいた同意を書面で得る。 具体的には、下記の内容について十分に説明したうえで、説明内容が記載された書面をドナー側に示すとともに、併せて交付する。
    1. 骨組織の提供の手続き、採取の方法、提供後のドナーの状態等
    2. 骨組織採取の目的 採取は、移植を一義的な目的として行われ、移植に用いられなかった場合は廃棄処分
    3. ドナースクリーニングに係る検査結果の開示 希望があれば、検査結果をドナー側に知らせる用意があること
    4. 骨組織の採取が行われた後の取り扱い 倫理委員会などで正当と認められた場合を除き、採取された骨は返還されないこと
  2. 任意性の確保 骨組織の提供に係る説明に当たっては、ドナー側の任意性の確保に配慮し、説明の継続を拒んだ場合にはその意思を尊重する。説明に当たっては、同意を拒否する権利があること、および拒否することによりドナー側が不利益を受けないことを明確に説明する。
  3. 中立性の確保 ドナー側に対する説明は、中立性を堅持するため、ドナーを担当していない者が説明を行うことが望ましい。

ヒト骨組織採取手続き

移植を目的とした骨組織の採取は、前項に定めるドナー側への説明と同意が得られた場合のみに許容される。

説明と同意のための書式

倫理委員会の承認を得たドナーおよびレシピエントに対する説明書と同意書は次のものを使用する。

  1. 同種骨組織移植を受ける患者への説明文・・・・様式1
  2. 同種骨組織移植手術同意書・・・・・・・・・様式2
  3. 同種組織移植のための骨組織等提供のお願い・・・様式3
  4. 同種組織移植のための骨組織等提供同意書・・・様式4

徳島市民病院骨バンクの機構と任務

骨バンクの業務は、ヒト骨組織の採取、処理、検査、保存、および情報の管理・提供に関わる一連の作業である。

  1. 骨バンクの体制 安全性と公平性に留意し、責任のある体制とする。当院の責任体系は、同種骨移植運営委員会組織図に別記する。また、ヒト骨組織の採取・処理・保存に係る業務管理責任者を設置する。
  2. ドナー情報およびレシピエント情報
    1. ドナー情報およびレシピエント情報は、別紙1および別紙2に記録する。
    2. ドナー情報の記録は、20年間中央病歴管理室に保存する。
    3. ドナーおよびレシピエントの個人情報を保護するため、個人情報管理責任者を設置する。

同種骨移植の適応

種々の病態による骨欠損の補填と骨組織の補強を目的とし、下記の場合に適応する。

  1. 自家骨や人工骨では対応できない場合。
  2. 自家骨や人工骨でも対応できるが、同種骨の使用により、より望ましい結果が期待できる場合。 なお、移植母床またはその近傍に活動性の細菌感染がある場合、同種骨移植には十分な注意を要する。

ドナー選択の基準

採取保存された骨組織によって、感染症や悪性腫瘍などの疾患が伝播されないように努める義務を負う。

以下の場合は、ドナーとして除外する。

  1. HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体(PCR法の併用が望ましい)、HTLV-1抗体、および梅毒血清反応等が陽性の場合
  2. 以下の疾患の既往がある場合 Creutzfeld-Jakob病、悪性腫瘍、重篤な代謝・内分泌疾患(糖尿病:インスリン使用患者)、自己免疫疾患、パルボウイルスB19感染症、SARS感染症

移植骨として不適切な骨組織

細菌、真菌の感染巣および開放創の近傍にある骨組織

骨組織の処理・保存のあり方

採取された骨組織の処理、保存については、標準的手順書を作成し、汚染防止に細心の注意を図るとともに、適切な微生物検査を実施すること。採取された骨組織においても処理過程の安全性および移植における有用性を確認すること。なお、当該骨組織は、手術室の専用超低温冷蔵庫に保存する。

保存、処理方法の選択基準

選択の基準を満たすドナーから採取された骨組織の処理・保存過程における汚染防止と適切な微生物クリアランスに努める。現在利用しやすい保存、処理法として1)冷凍保存、2)加温処理・冷凍保存、3)脱脂・冷凍乾燥・エチレンオキサイドガス滅菌がある。当院では、2)の加温処理・冷凍保存法で行う。

注記:様式1~4及び別紙1~2は掲載省略

同種骨移植実績

同種骨移植の最近3年間の実績は以下のとおりです。現時点では移植による問題点(感染、骨癒合不全等)は何も認められませんでした。

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